僕には雪女(スノーホワイト)なお姫様がいます僕には雪女(スノーホワイト)なお姫様がいます
青橋由高(著)・HIMA(イラスト)
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「私、きみのHに溶かされちゃう!」
宝石のように美しい破瓜の涙を流して雪女のお姫様ユーリヤが初体験絶頂!
年上幼なじみとイチャラブ雪国生活。
元イジメっ子が大好きフェラ、巨乳を揺らしドレス騎乗位、聖夜HにバレンタインHで暖めて
……季節が巡る、雪姫様と【永遠に溶けない恋物語】!

その2から続く)

 今作で最も苦労したのは、初稿からページを削ることでした。これ、いつも私言ってますけれど、今回は特に大変だったのです。
 私はキャラや設定の細部を考えながら、探りながら、試しながら初稿を書くスタイルなので、読み返してみると「あ、ここいらないな」「こっちは他とかぶってるな」と、カットしたりコンパクトにできるシーンはある程度目処が立つのです。
 しかし、今回はそれがほとんどありませんでした。少なくとも、私には見つけられませんでした。

 改めて当時の作業記録を確認しましたけど、まるまるカットしたシーンは2章の冒頭と3章の中盤のみ。
 前者はユーリヤと涼太郎がホテルからテニスコートに向かう際の会話シーン。まあ、ここはいらんかな、と。このあとで公開しますけど。

 後者は、お祭りに参加してるお客さんの描写。1ページ半くらい。このシーンはお遊び要素だったから、書いてるときから「改稿のときにカットするんだろうなぁ」とか半ば覚悟してました(笑)。
 高校時代から付き合ってるという吸血鬼の女と人間の男のカップルがいちゃこらしてるのを見て、ユーリヤが涼太郎に「私もああいうのやりたかったなー」と睨む、みたいなシーンです。
 もちろんこのバカップルは真鈴と優志。卒業後もあのまま幸せにやってます。詳しくは「恋姫〜彼女はヴァンパイア!」をお読みくださいませ。後日談の同人誌もいくつか書いてます……と、懐かしの作品を露骨にプッシュ。

恋姫恋姫〜彼女はヴァンパイア!
青橋由高(著)・安藤智也(イラスト)
美少女文庫
公式サイトはこちら(サンプルあり)
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後日談を描いた同人誌はこちら

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 ちなみにこのシーンは加筆訂正して、メロンブックスさんの特典に使ってもらいました。

 カットできないときはどうするか?
 書き直すんです。少しでもコンパクトになるよう、ゼロから書き直すのです。
 一章の前半とか、だいぶシンプルにしましたね。

 今作はストーリーとか設定よりも、ヒロインのユーリヤとの日常を楽しんでもらいたいと考えてたため、どうしてもセリフが多くなりました。一見すると無駄なんですけど、作者としては削りたくなかったので、他のところを頑張ってどうにかこうにかしたのです。

 幕間を削る、という最終手段は当初から頭にありました。が。ここはなんとしても残したかったのです。半分は意地でした。ぶっちゃけると、本筋には関係ないですから、あれ。
 ページに余裕があれば、本当は雪女たちとユーリヤの関係とか、もっと描きたかったんです。実際、書くはずだったんですが、削ったり消しました。だからこそ、あそこだけは残しました。作者のエゴです。もし、読者のみなさまもあの幕間を楽しいと思ってくださったなら、最高に幸せです。
 最高におバカなシーンばっかりですけどね!


 エピローグは、あれ、プロットの時点では決めてませんでした。なにしろプロットではこうとしか書かれてませんでしたからね。

○エピローグ
・未定
・再びの春?

 雪姫の通り名も、書いてるときに思いついたものです。


 以下、カットした2章の冒頭テキストです。ネタバレがいやな方は注意。
(二章の冒頭シーン、初稿バージョン)

 夏は、雪守村にとって冬と同じくらいに大切な書き入れ時である。
 当然、ホテルの支配人であるユーリヤもそれなりに忙しくなるし、その補佐役(最近、支配人付秘書という肩書きがつけられた)である涼太郎も同様だ。
「今日も暑いなぁ。外、出たくないなぁ」
 テニスウェアに身を包んだユーリヤが、日傘とラケットを手にげんなりとした顔でホテルの廊下を歩く。やたらとゆっくりなのは、冷房のある屋内に留まりたいという願望の表れだろう。
 涼太郎にとっては残念なことに、ユーリヤが着てるのはUV対策用の長袖ウェアのため、肌の露出度はかなり低い。自分以外の男に見られなくて済むのはありがたいが。
「私、雪女だよ? 真夏は冬眠してちゃダメかな?」
「他の雪女のみなさんも頑張ってるんだから、諦めてください、お姫様」
「頑張ってるよー。どっかの誰かさんが楽しいキャンパスライフ送ってるあいだも、私は一人寂しくお仕事してたしー」
 長い銀髪を指にくるくると巻きつけたユーリヤが、恨みがましそうに言う。
「だって学生ですから。勉強が本分ですから。あと、ユーリヤが考えてるほど楽しくないですから」
「ホントにぃ? 私がいないのをいいことに、羽目を外してるんじゃないのぉ?」
 ユーリヤは涼太郎に身体を寄せ、顔を覗き込んでくる。冗談めかしてるようだが、目は真剣だった。夏の空よりも青い瞳がじっと涼太郎の反応を窺っている。
「講義が終わったらまっすぐホテルに帰ってるじゃないですか」
 そして、ホテルにいるあいだは、ほぼずっとユーリヤと一緒だった。最近では寝るときも同じ部屋であることのほうが多い。
「きみは前科持ちだからねー。一度失った信用を取り戻すのは大変なのだよ」
「まだ根に持ってるんですか、僕が村を出たこと」
「べっつにー? 飼い犬に手を噛まれたくらいのこと、いつまでも怒ってられるほど、私は暇じゃないもの」
 言葉のあちこちにあるトゲが、ちくちくと涼太郎の心を刺してくる。
「僕は飼い犬なんですか……」
「似たようなものでしょ。……ああ、そうか、子供の頃にもっときっちりきみのこと躾けておけばよかったんだ。そしたら、飼い主から逃げたりしなかっただろうし」
「逃げたわけじゃないですし」
 ユーリヤに認められたい一心で村を出たことはすでに何度も説明し、納得もしてもらったはずなのだが、いまだにこうしてねちねちといびられる。
「どうかなー。うちの連中が見つけて捕まえてこなかったら、もしかしたらそのまま戻って来なかった可能性だってあるでしょ? 今頃、あっちで別の飼い主に尻尾振ってたかもしれないし。……そうだ、今度、首輪を買ってみよっか?」
「やめてください。あなたが言うと冗談に聞こえない」
「んふふふ」
「あ、この人、否定してくれない」
 そんな間抜けな会話をしてるうちに、テニスコートに出るエントランスに着いた。今日はこれから、VIP客のテニスの相手が予定されている。ユーリヤだけでなく、涼太郎も、である。
「……私はここからきみたちを見守るってのはどうかな?」
「ダメに決まってるでしょう。ホステスはあなたで、僕は補佐にすぎないんですから」
 発端は、昨夜のディナーだった。ユーリヤと一緒に挨拶をした際、客から明日はテニスを楽しむ予定だと聞き、つい、高校時代にテニスをしてたことを口にしてしまったのだ。ならば是非二人に相手をして欲しいと頼まれ、現在に至る。
「私の許可も取らずに勝手にテニスなんて軟派な部活やってたきみが悪い」
「どんな偏見ですか」
「スキーとかテニスなんて、女を狙う連中のやるものだよ」
「うちのホテルの売りを根幹から揺るがす発言はやめてください支配人」
 もちろん、ユーリヤが本気で言ってないのはわかる。要するに、涼太郎に関することで、自分が知らない事実が出てきたのが面白くないのだ。
(ボディーガードの一件、ばれたら怒るかなぁ)
 ホテルに来てから、今のところユーリヤへの襲撃らしきものは一度も起きてない。早穂に言わせると、
「涼太郎くんが側にいるから、敵も警戒してるのでしょう。このまま姫様の警護をよろしくお願いします」
 ということらしい。
(ま、怒られるくらいはいいか。ユーリヤになにも起きないよう、警戒だけは続けないとな)
 念のためユーリヤより先に外に出て、周囲に怪しい人影がないかを確認する。
 いたのは、先にコートに来て練習を始めていたVIP客の一家だけだった。
「うあああ、暑い……暑いよ涼太郎……溶ける……雪女にこの暑さは無理……っ」
 一歩出た途端、ユーリヤはだらだらと大粒の汗をかき始めた。
「? どうかしたの、涼太郎」
「いえ、やっぱり結晶化しないなぁ、と」
「なんでもかんでも汗が『雪姫の涙』になるんだったら、私、毎日サウナに入るよ」
 ユーリヤの感情がポジティヴな方向で高まった際に分泌された体液だけが結晶化し、「雪姫の涙」となる。
 この稀少な結晶は最近、供給量が大幅に増えていた。
「……」
「あ、今、エッチなこと考えてたな。スケベ」
「べっ別にそんなっ!」
 毎朝、シーツに結晶がないかを確認し、あれば拾い集めるのが日課になった涼太郎が慌てて首を振る。ユーリヤは恥ずかしがるが、支配人として、一族の長として大切な財源なので、妨害はしてこない。
「あ、お客様たちがこっちに気づきましたよ。もう逃げられませんね。諦めて頑張ってお相手しましょう。接待は重要な仕事なんですから」
「わかってるってば。でも、私は接待でも勝負事には手を抜かないから。たとえ相手がVIPであれ年寄りや女子供であれ、全力でプレイするつもりだよ」
「うわ、大人気ない」
「しかたないでしょ、私、テニスは遊び程度しかできないんだから。上手に手を抜くなんて無理だもの。そういうのは、私の目の届かない大都会で女の子とボールを追っかけ回してたきみに任せた」
「大人気ない上に、執念深い」
「愛が深いと言って」
「それ言われたら僕はなにも反撃できなくなるんですが」
「うん、わかってて言ってる」
「ずるいですね」
「恋は女をずる賢くさせるんだよ」
 そんな会話をしながら、涼太郎たちは小走りで客たちのいるコートへと向かった。

(本編の二章に続く)