昨年の冬コミで先着約100名ちょっとだけに配布した特典ペーパーのテキストを公開します。ページにして約6枚の、エロなしの後日談です。まったく中身ありません。しかも原作の「ダブルスコア〜このダメ大人っ!」読んでないとまったく意味不明。

ダブルスコア〜このダメ大人っ!ダブルスコア〜このダメ大人っ!(18禁)
青橋由高(著)・稍日向(イラスト)

 とらのあな・てくの屋・DMM・オータムリーフのいずれにも在庫はありますが、我が家にはもうないので、入手はお早めに。増刷の予定は(当面)ありません。

「もう逃げられねえぞ、この野郎」

 涼太は怒りでこめかみをぴくぴくさせながら、佳奈をベッドに押し倒していた。
 端から見るとちょっと、いやかなり犯罪チックな光景であるが、無論、涼太が少女を強姦しようとしている……わけではない。そんな度胸があるはずがない。

「なんとか言いやがれ」

 佳奈は唇を尖らせてむくれた顔を、ぷいと横に背ける。

「あ、てめ、なんだその態度は。人の部屋に不法侵入しただけならともかく、俺の大事なコレクションをどうにかしようとしやがったクセに!」

「わ、私には黙秘する権利があるわ! 弁護士を呼んで! それから……動いたから汗かいた! なにか飲み物ちょうだい! イチゴ牛乳が飲みたい!」

「盗人猛々しいとはお前のことだ!」

 春休みに入ったものの、新学期への準備で涼太はとにかく忙しかった。新年度からは受け持つ授業も増え、二年生、それも佳奈のクラスの副担任も任される(もちろん、名誉理事である祖母の差し金であろう)。
 必然、晴れて恋人となった佳奈との時間はなかなか確保できない。
 春休みはあちこち遊びに行くつもりだったらしい佳奈が機嫌を損ねるのは、ある意味見え見えの展開だったとも言えるが、

(だからって、留守中の部屋に侵入して、俺のお宝を勝手に処分しようとするってのは行きすぎだろ!)

 忘れ物を取りにたまたま一時帰宅したからよかったものの、そうでなければ涼太の大切なオタクグッズのいくつかは持ち出されていたことだろう。

「私より仕事を選んだリョータが悪いんだからね!」

「おまっ、人に責任云々言っておいてその発言はどーなんだ!?」

 いつの間にやら両家公認の仲になっているとはいえ、色々ハンデがある関係なのは変わらない。だからこそ仕事だけはしっかりやろうとしている涼太にしてみれば、佳奈の言葉はさすがにカチンと来る。

「それはそれ、これはこれ!」

「居直りやがった!?」

「仕事も大事だけど、私が一番じゃなきゃヤダもん!」

「うわ、可愛いセリフで誤魔化そうとしてる! でも、誤魔化されたい俺がいる!」

 ちょっと萌えてしまう涼太。

「そもそも、私という恋人が……婚約者がいるのに、どうしてこんなエロスな本とかゲームが必要なのよ!?」

「それはそれ、これはこれだ!」

「居直った!? リョータのクセに居直った!?」

「お互い様だ! しかもお前、俺のお宝のなかでも逸品ばかり持ち出そうとしやがって……って……あれ?」

 床には佳奈が部屋から強奪しようとしていた本やゲーム、同人誌が散乱しているが、

「なんだ、これ全部……巫女ものじゃないか」

 拾い集めてみると、すべて巫女関連の本やゲームだった。

「『隣の巫女さんは皆笑う』に『魔孕巫女』『哉羅さまの日常』……稍日向比率高いなぁ。お前、巫女さんに恨みでもあるのか?」

 お宝を本棚に入れ直しながら、ふて腐れている可愛い恋人に尋ねる。

「アンタなんかに言う必要ないでしょっ」

「……別に、お前をないがしろにしてるわけじゃねえよ。だからさ、黙ってこういうことするのはやめろ。本やゲームに罪はないんだから」

「……違うわよ」

「ん?」

「別に、捨てるつもりだったんじゃないわよっ、このバカ!」

 ベッドから勢いよく起き上がり、そのまま部屋を出て行く。

「あ、逃げた!?」

 と思った二分後、紙袋を持った佳奈が戻ってきた。

「犯罪者が現場に戻るって本当だったんぐわっ!」

「誰が犯罪者だ、この変態! ペド野郎!」

 佳奈は叫びながら、今、涼太の頬を叩いた紙袋(結構重くて痛かった)のなかから服らしきものを取り出す。

「ああっ……巫女装束!?」

 白と緋色をしたそれは間違いなく巫女さんが身に纏う神聖なる服だった。

「どうしたんだ、それ? 買ったのか!?」

「し、しかたないでしょ! アンタが今年の初詣のとき、巫女さんにデレデレ鼻の下伸ばしてたせいなんだから!」

 耳まで真っ赤にして叫ぶ佳奈を見て、ようやく事情が飲み込めてきた。

「もしかして……俺のために? それで、巫女さんの本とかを?」

「だって、巫女の格好しただけじゃアンタが食いつくかわかんないじゃないの!」

 エロマンガやエロゲーを参考にして、巫女プレイで涼太の気を引こうとしていたらしい。

(うおっ、やっべ……なにコイツ、めっちゃ可愛いじゃん……萌えるじゃん!)

「か、勘違いするんじゃないわよ!? 別に、リョータにかまって欲しいからじゃなくて、アンタみたいな変態が巫女さんに手を出さないように……きゃん!」

 気づいたときにはもう、涼太は佳奈を思い切り抱き締めていた。

「あ、こら、なにしてんのよ、変態教師! 犯罪者! スケベ!」

 しかし佳奈は口だけで、本気で涼太を振り払おうとはしない。

「あー、お前、可愛いよ。佳奈、最高だよ」

「あ、当たり前でしょ? なによ、今頃気づいたの?」

「うん。佳奈みたいなお嫁さんもらえる俺、最高に幸せ者だよ」

「そ、そう? ま、まあ、うん、アンタに褒められても嬉しくなんかないけど……イヤな気はしないわね」

 佳奈も涼太に身を預けてくる。ちょっといい雰囲気になりかけるが、

「でも、その巫女服着てくれると、もっと最高かもしれなぐはァッ!」

 自分の欲望にストレートすぎたせいで顎に頭突きを食らってしまう。

「この……ダメ人間! 変態! ろくでなしぃ!!」

(くっ……調子に乗りすぎたか……っ)

 じんじん痛む顎を手で押さえながら、涙目になってうずくまる三十二歳独身。
 だが、十六歳の少女は涼太の予想外のセリフを口にする。

「言っておくけど、見るだけだからね! 他にはなんにもしないんだからね! 私になにかしても許さないんだからね!」

 そしてさらに五分後、涼太の目の前には愛らしい巫女さんが照れているのか怒っているのか微妙な表情でもじもじしながら立っていた。

「うおおっ、巫女さんだ! ロリ巫女だ! ツンデレ巫女の降臨だ!」

 無論、涼太は飛びつく。抱きつく。押し倒す。漢としては当然の反応である。

「あ、こら、見るだけって言ったじゃないの! バカバカ、バカリョータの嘘つき! やめろってこの性犯罪者予備軍、真性ロリコン!」

「んー? でも佳奈、下着つけてないじゃん。本当はその気だったんだろ?」

 涼太の指摘に、佳奈の白い肌が一瞬にして真っ赤に染まる。

「し、知らない……知らないんだから! リョータのクセに勝手なこと言うんじゃないわよ! こ、この……このダメ大人っ!」

 忘れ物を取りに帰るだけだったはずの涼太が学校に戻ったのは、これから二時間後のことである。

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