みすてぃっく・あい
一柳凪(著)・狐印(イラスト

閉ざされた女子寮、わたしたちのキケンなアソビ──

冬休みの女子寮には、四人の美術部員しかいなかった。
ぼけぼけおっとりの沖本部長に読書魔(ビブリオマニア)の天才・三輪先輩、あっぱらぱーの門倉せりか、そして優柔不断な私・久我崎蝶子。
私たちはひたすらに戯れる――ピクニックをしたり、チェスをしたり、いっしょにお風呂に入ったり。
けれど、蛇行をつづける他愛ないのおしゃべりも、ぼんやりとした空想に耽る時間も終わるだろう。
なぜなら私は迫られてしまったから――せりかと先輩に。
三角関係。
私は選ばなければいけない――愛の行方を。

第1回小学館ライトノベル大賞・期待賞受賞作。「虚数の庭」を改題。


 初めてガガガ文庫を読みました。今さらかよ! とか罵られそうですけど。

 正直に言います。最初は、甘ったるい百合小説を期待して買いました。
 断言しますが、私と同じ期待でこれ買った人、全国に数千人いると思いますよ?(笑)

 しかし……しかし! 物語は私が予測(期待とも言う)していたものとは全然違う展開を見せるのです!

 もうね、プロローグの時点で「んん?」と、ほんのり違和感を覚えます。読み進めるとその感じはより強く、鮮明になっていきます。

「おいおい、クロウリーかよ!?」

 かつてその筋にハマっていた私は独り言を呟きながら読み進めます。
 話はどんどん当初の予想とは違う方向に向けてずんどこ進んでいきます。

 最初の2割ほど読んだあたりで、私はある疑惑・疑念を抱きます。

「これ……ライトノベルっていうより、ミステリっぽくね?」

 私が大好きだった講談社ノベルスの新本格ミステリの数々が脳裏をよぎります。それも初期の新本格の作品群。たとえば麻耶雄嵩さんの「翼ある闇」(これは歴史に残る名作!)みたいな、あのテイストです。
 ミステリだけど、幻想小説でもあるような……私のつたない文では伝えきれませんが、わかる人にはわかる、あの雰囲気がありました。

 しかし、この「みすてぃっく・あい」はミステリではありません。ライトノベルなのです。
 そう自分に言い聞かせながら淡々と読み進んでいくと……やっぱりミステリっぽいんですよね。衒学的とまではいきませんが、それに近いところがよりそう思わせるのでしょうが。
 あるいは幻想小説にも近しいものを感じます。

 また、あちこちに散りばめられた小道具・イメージ・キーワードがどうにも私を落ち着かなくさせます(ミステリ好きの性かも)。


 そして後半、いよいよ物語は急展開します。
 ある意味予想どおり、ある意味完全な予想外の方向に話は転がっていきます。

 ネタバレになるから書きませんが、自分の感性が正しかったことが判明してちょっとほっとしました。途中、ずっとおかしいなーって感じてたことがいくつかあったんですよね。それがちゃんと説明されてて一安心。

 ラスト間近で、それまで紡がれてきたシナリオが一気に収束に向かいます。向かうはずでした。


 あのラストは、私の中ではまだ結論が出ていません。
 あれでよかったのか、そうではなかったのか。
 うむむ。



 物書きを目指して感性の向かうまま書き殴っていた中学生・高校生の頃の自分を久々に思い出した作品でした。
 あの当時の私が書こうとしていたのは、確かにこんな感じだったのです。ミステリとオカルトが好きで、ちょっと凝った文体の青春小説。

 今じゃ誰も信じてくれないでしょうけど(笑)。


 久々に、他の人の感想を聞いてみたいと思った作品でした。