お嬢様フォーシーズンズ
青橋由高(著)・天河慊人(イラスト)

公式サイト


 「お嬢様フォーシーズンズ」、天河慊人さんのイラストのおかげか、予想以上に売れてるようです。私としては嬉しい誤算でした。

 せっかくだから、ここで販促して、一気に増刷を狙おうとこすっからい戦法を実施します。

 さくさくっと書き下ろしたショートショートです。エロはないですのであしからず。
 本編のネタバレがありますので、未読の方はご注意を。さっさと購入してからお読みください。

 うふふ、なんて露骨な私
 内容は、玲欧奈と大地が初エッチした翌日の出来事です。110ページでさらっと書かれてる部分ですね。

 本当は月曜だけでなく、金曜までびっしりとエロありで書こうかとも思ったのですが、分量が凄くなっちゃうし、今回は断念しました。

 当初は今の季節に合わせて、雫の卒業式を描こうと思ってました。
 こっちも長くなりそうなので、今回はパス。
 いつか機会があれば書きたいですけれど。

 では、短いですが、お楽しみくださいませ。



「月曜はいつもより早く家を出なさい、いいですわね!?」

 有無を言わさぬ口調で命令されたとおりに、大地は指示された時刻より少し早く寮を出た。

(こっちの道だと、かなり遠回りになっちゃうんだけどなぁ)

 そう思いつつも、玲欧奈に指定された待ち合わせ場所に律儀に向かう。

(でも、たまにはいいかな、こういうのも)

 玲欧奈がなにを意図して呼び出したのかはわからないが、早朝の、人気の少ない道を歩くのは気持ちがよかった。そろそろ暑くなってきたが、この時間は実に爽やかだ。

「……あれ、玲欧奈さん?」

 学園の近くにある市民公園のベンチ横に、金色の髪をした美しい少女がやや落ち着きなく佇んでいた。

「だ、大地っ!? は、早いのですね!?」

 大地に気づいた玲欧奈がびくりと身体を震わせたのがわかった。
 公園の時計を見ると、玲欧奈が言った時刻より二十分ほど早い。

「おはようございます。……ええ、待ってる間に本でも読もうかと思ってましたから」

「ふ、ふん、嘘おっしゃい。ホントはわたくしと逢い引きできる興奮で寝られなかったのでしょう?」

「あ、逢い引き!?」

 日常生活ではまず聞くことがない単語に戸惑い、そしてその直後に、

(そ、そうだ、僕、こんな綺麗な人と、エッチ、しちゃったんだ……)

 あのときの光景がまざまざと脳裏に甦り、大地は頬を熱くした。

「勘違いなさらないでくださる? わたくしは別にあなたと一緒に登校したいからこうして呼び出したわけではなくてよ?」

 玲欧奈は、大地と同じように赤くなった頬を隠すようにくるりとこちらに背を向ける。今日もきっちりカールされた黄金色の髪が優雅に舞う。

「た、ただ、その……少し、あなたと話をしてあげてもよろしいかと思っただけですわ。美空のことで伝えなくてはならないこともありますし」

「はあ」

 どんな態度をとっていいかわからないので、大地は適当な相づちを打つ。
 誰もいない早朝の公園で学園を代表する美女と二人きりという状況に、大地もまた、かなり緊張していたのだ。

「……な、なにをしてるのです、さっさと行きますわよ!?」

 怒ったような、けれどどこか照れたような表情の玲欧奈に叱責される。

「い、行くって、どこへです?」

「学園に決まってるでしょう! あなた、バカですの!? そ、それともまさか……わたくしと一緒にいたいからと、このまま学校をサボタージュするとおっしゃるの!?」

 正直なところ、それはとても魅力的なアイディアだと思ったが、奨学生の大地にとってはちょっと二の足を踏む行為でもあった。

「い、いえ、さすがにそれは」

「……そうですの」

 玲欧奈はなぜかどこか残念そうに呟く。

「意気地なし」

 大地にかろうじて聞き取れるくらいの声で付け足してくる。

「じゃあ、登校しましょうか」

 照れ隠しのように、大地が少し早足で歩き出す。だが、玲欧奈はついてこない。

「……玲欧奈さん?」

「これだから庶民は困るのですわ! レディをエスコートするやり方も知らないなんて!」

「え?」

「んっ」

「?」

「んっ!」

 見ると、玲欧奈が腕を不自然に曲げている。

(えーと……これって……腕を組めってこと……?)

 これ以上待たせると本気で怒られそうだったので、意を決して腕を差し出す。

(違ってたら、勘違いしないでくださらない、庶民の分際で! とか言われそう……)

 などとどきどきしながら待ってると、

「……気が利かないんですからっ」

 ぶつぶつ文句を言いつつも、玲欧奈はすぐに大地の腕を抱き締めるように身を寄せてきた。上腕にむにゅりとした感触。この巨大なマシュマロを揉んだのだと、改めて己の身に起きた僥倖に驚く。

「言っておきますが、この公園を抜けるまで、ですわよ? 他の生徒がいるところでは、」

「わかってます」

「……なら、いいのよ」

 玲欧奈がさらに強く腕を抱き寄せる。
 この時間が長く続くようにと、二人とも可能な限りゆっくりと歩く。会話は特にないが、それが苦痛ではない。

「……そうだ。玲欧奈さんはどうしてこんなに早く着いたんですか?」

「なっ!?」

「そんなに驚くような質問じゃないと思いますが……」

「ま、まさか、わたくしがあなたと会うのを待ちきれなくて早めに来てたとか思ってないでしょうねっ」

 玲欧奈が鋭く大地を睨む。

「どきどきして眠れなくて、朝早く目が覚めてしまった、なんて邪推したらただではおきませんことよ!?」

 だが、そのエメラルドグリーンの瞳が若干充血してることに大地は気づく。

「は? いえ、そんなことは……って、え、そうなんですか?」

「お、思い上がるのもいい加減になさい、この平民ッ」

 ぷいっとそっぽを向かれてしまったが、玲欧奈は決して大地の腕を放そうとはしなかった。

(終)