わかつきひかる(著)・神無月ねむ(イラスト)
キミは私たちのご主人様なんだから。
女子寮に入った美樹クン(♂)を待っていたのは、天使たちの誘惑ハーレム。
強気系幼なじみが、純情系上級生が、天然系シスターが、大切なバージンを捧げ、甘く激しくご奉仕してくれる!
乙女たちに可愛がられたり、奴隷たちに意地悪したり……夢の女子校生活!
ある意味究極のエンターテイメント作品である官能小説というジャンルですと、どうしても意識的にある特定パターンを踏襲する傾向があります。
もちろん作家の技量の低さによるワンパターンもありますが(私がそうです……)、少なくとも私の知ってる範囲の作家さんたちの大半は意識して、あるいは編集サイドの要請でもって、自分の得意パターンに話を持っていきます。当然、それが多くの読者の望みだからです。
「これこれこういう傾向の作品だと売れた」「でもこういう作品は駄目だった」というデータがある以上、エロだろうがなかろうが、商業作品なら多かれ少なかれこういった縛りは存在します。
エロは比較的制限少ないですけどね。同じエロでも某社なんかはめちゃくちゃ規制が多いそうですが(汗)。視点まで決められてるそうですからねえ。まあ、それが「売り」で、実際ニッチな市場で成功してるんだから戦略としては「正しい」のです。私も好きだし、あれ(^_^)
さて、前置きが長くなりましたが、そんななかでも作者は色々と試行錯誤をしているわけです。読者サイドからはあまり見えないかもしれませんが、みんな考えてるんです。悩んでるんです。
どうしたらもっと喜んでもらえるか、エロエロになるか、次も買ってみようと思わせられるか、売れるか。
同時に、自分の書きたいものとのすり合わせにも悩み、消耗します。
そんななか、美少女文庫の大黒柱であるわかつきさんのこの新刊は、敢えて難しい題材・課題に挑戦しています。
私の記憶だと、ここまではっきりしたハーレムっぽいストーリーは書かれたことなかったんじゃないでしょうか。しかもどこぞの遅筆作家とは違い、リアリティのあるストーリー展開・心情描写でヒロインたちが主人公との特殊な関係を受け入れるシーンを見事に描ききりました。
さらに凄いのは、今までとは違う結末へと持っていきつつも、きちんと「わかつきひかる」作品であることです。言葉の使い方とか文章のクセなんていう細かい部分ではなく、作品が発する雰囲気がちゃんと「わかつき作品」なんですよね。
これまでの「ラヴラヴ調教」だけでなく「ラヴラヴ調教ハーレム」も書けることを証明したこの作品は、今後、大きな意味を持ってくるかもしれません。
イラストは表紙イラストを見てわかるように凄く可愛い上にエッチぃですし(これだけでも買いかと)、ストーリーもきっちり練られています。
ただ一つだけ残念な点が。
……ページ足りなーいっ! もちっとヴォリューム欲しいっ!
コメント
コメント一覧
わかつきさんの作品は、ほぼ全て読んでいたのですが、私のような者から見ても、
最近のいくつかは、自分らしさと新しさとの葛藤に苦しんでおられる様子でした。
ですが、「なでしこ寮へ〜」は、その葛藤から脱却できたようですね。
わかつきさんらしい深い想いのある行為と、複数人の絡みがきれいに融合できているからでしょう。
いくつかの作品でたまに感じていた「無理しているのでは?」という違和感がありませんでした。
ちょっと躊躇しつつあったのですが、この作品のおかげで、安心して「出たら買う」を継続できます。
もちろん、青橋作品も「出たら買う」ですけど。
私はいわゆる職人タイプの書き手なので結構ゆるゆると書いてますけれど。
それなりにコンプレックスはあるんですけどね。一応。自分が作家タイプじゃないことに対して。