平成最後の日ということでなんかやってみたいなーと思いまして、4ページほどのショートショートをお遊びで書いてみました。販促に使うわけでもないので、完成度とか内容とか気にせず、だらだらと自己満足でやりました。

 元ネタは2015年3月に発売された「恋乙女 ヤンデレ生徒会長ささら先輩と毒舌水泳部・琴子ちゃん」。

通常サイズ恋乙女 ヤンデレ生徒会長ささら先輩と毒舌水泳部・琴子ちゃん
青橋由高(著)・有末つかさ(イラスト)
美少女文庫(サンプルあり)
自己解説はこちら
Kindle……あれ? 検索してもヒットしない?
honto……電子版がない?
FANZA
DLSite


 後日談となってますので、完璧にネタバレになってますので未読の方は注意。
『平成最後に便乗したSS』

「なんでもかんでも平成最後ってつけてるわよね、ここのところ」
「まあ、そうですね」
 なんの脈絡もなく話題を変えてきたささらに対し、悠真は取り敢えず相槌を打っておく。
(下手な発言すると、すぐに揚げ足取ってくるからな、このひと)
 歳上の恋人の話がぽんぽん飛ぶのはいつもなので慣れているが、だからといって油断はしない。
「どうせすぐに令和最初の、ってのにシフトするんだろうけれど」
「それも……そうでしょうね」
「ところでキミは、平成の意味、知ってる?」
「へ? ええと……平らに成る、でしたっけ?」
 先日、テレビでそんな説明を聞いたような気がする。
「そう。つまり、琴子の胸よ」
「なんでそこでいきなりあたしを出すわけ!?」
 ここまで興味なさそうにスマホをいじくっていた琴子が、ささらに食ってかかる。
「え? だって平らよ? フラットよ? 水平よ? 直線よ? あなたの胸部を連想するに決まってるじゃないの」
「ぶよぶよの贅肉の塊をぶら下げてるだけの分際で、どうしてそこまで偉そうに誇れるのか、理解に苦しみますね。ああ、そうでしたね、ささらさんの脳は老化で残念なことになってたんでしたっけ。すみませんでしたー」
 悠真を挟んで二人の美少女が偽りの笑顔を浮かべながら、言葉の刃物で互いを斬り合う。
 悠真を巡る特殊すぎる三角関係が形成されてもうそれなりの時間が経つが、ささらと琴子の争いが収束する気配はかけらもない。真剣ではなく木刀で相手の急所を全力で殴るような、そんな関係である。
「いいのよ、琴子。謝るのは私のほうだわ。あなたのバストは平らじゃなかったものね。へこんでるものね。ごめんなさい」
「いいえ、あたしこそ謝ります。平成どころか昭和生まれのささらさんと、まともなコミュニケーションをとれるなどと考えたあたしが浅はかでした」
(あああ、また……。そしてこれ、俺に火の粉が降りかかるパターンだ……)
 仲介はもはや不可能と知ってるので、悠真は無視と無言と無関係を装う。それがただの現実逃避、あるいは問題の先送りでしかないことも重々承知しているのだが、他に対策もないのだ。
「ううん、琴子が浅バカなのはとっくに知ってたから、謝る必要はないわよ?」
「耳まで遠くなっちゃったんですね。可哀想に。センパイ、今度一緒にこのおばあちゃんの補聴器を見に行きましょうか」
(なんでそこで俺を巻き込みやがるんだ、琴子め!)
 気配を消そうとしていた悠真の計画は、あっさり失敗に終わった。
「補聴器、いいわね。ちょうど祖母が、新しいの欲しいって言ってたし。悠真のこと、紹介しなきゃいけないしね。ひ孫を抱ける日を楽しみにしてるそうよ? 頑張りましょう、ダーリン」
 ささらが家族ぐるみ、親族ぐるみでの付き合いをアピールしてくるが、どちらかといえばこれは琴子に対してというよりも、悠真への攻撃だ。逃がさないわよ、という強い意志の込められた視線を感じる。
「残念ですが、センパイの淫獣遺伝子を後世に、令和に伝えるという最低最悪な役目は、このあたしが引き受けることになってます。犠牲者はあたし一人で充分ですから、ささらさんはこの精子タンクのことは忘れて、ちゃんとした人間の牡と幸せな家庭を築いてください」
 徐々に攻撃範囲が広がり、そこに悠真が巻き込まれていくのも、毎度毎度のパターンである。
「お前はいつまで俺を人外扱いするんだよ……」
「自分が人間だと思い込んでる憐れな淫獣ダブリンは黙っててください」
「悠真、平成最後と令和最初のエッチはなにがいい? パイズリ? パイズリ? それとも……パイズリ?」
「はい、そこの無駄肉の牛乳女、うちのペットに手を出さないでください」
 勝ち誇った顔で豊乳を押しつけてくるささらと、それを憎々しげに睨みつけつつ、負けじと全身でしがみついてくる琴子。
(あ。読めた。この先の展開、完全に読めた)
「しかたないわね。じゃあ琴子、平成最後の日は、私と悠真の愛の巣に来なさい。お情けで泊めてあげるわ」
「はあ? 愛の巣? ただの一人暮らしのマンションじゃないですか。ブエノスアイレスと勘違いしてませんか?……まあ、せっかくのお誘いですし、遠慮なく押しかけさせてもらいますけど」
 憎まれ口を叩き合いつつ、大型連休の予定を二人で勝手に組んでいく。
「ええと、俺にも一応、予定があるんですが……大会とか、トレーニングとか」
 小声でそう異議を唱えてはみたものの、もちろん、恋人たちにはスルーされた。

(終)