シャカリキ! 1
曽田正人


 実写映画になるということで再び注目を浴びている、自転車乗りなら誰もが知っている名作です。

 ……なーんて書いておきながら、実は私も読破したのは比較的最近。ラストのほう(沖縄のゴールあたり)はリアルタイムで読んでましたけどね。

 ストーリーは、ありとあらゆる坂を自転車で登ることに情熱を燃やす主人公・テルが、様々なライバルや仲間たちと出会いながら成長していくという、ある意味少年マンガの王道路線です。

 ただし、そこは奇才・曽田正人、そこらにありふれてる(問題発言)少年マンガとは中身がまったく違います。
 この方の作品は何作か読んでますが、この「シャカリキ!」も同様に、とにかくキャラが魅力的なんです。読んでいて腹が立つキャラが出てきません。

 話を盛り上げるために読者の反感を買うキャラを出して、それを主人公に倒させる。
 そんな安易な手法はとらないんです。

 かと言って、ただ読者に迎合するようなキャラでもありません。
 みな、それぞれの立場で、一生懸命生きています。
 けれど、決して他人を蹴落として前に進もうとはしません。

 熱血。だけど清々しい。だから感動します。


 主人公のテルは完璧なクライマー。坂を登るスペシャリストです。
 そしてライバルのユタはダウンヒラー。坂を高速で下るスペシャリストです(厳密に言うとオールラウンダーっぽいですけど)。

 性格も脚質も外見も見事に対極。
 それゆえにいがみ合い、また惹かれ合います。
 あの有名なゴールシーンで描かれてますが、それこそ恋人同士のように。


 坂は、慣性も重力も使えません。頼れるのは己の力のみ。
 常にペダルを回し続けなければ、自転車は進みません。
 クライマーであるテルは、まるで人生を切り開くかのように坂に挑み続けます。

 下りは、一瞬の判断が文字通り命取りです。
 背中に死神の存在を感じつつ、それでもスピードを落とさないダウンヒラーのユタは、まるですべての可能性を追い求めてるかのようです。


 テルは見果てぬ夢を求めて登り続け、ユタはどれだけ離されていようとも追いつき、抜き去ろうと下り続けます。
 あのラストシーンは何度読んでもいいものです。


 やっぱり、少年マンガの王道って、ライバルとの戦いですよね!


 この作品を読むと、自転車に乗って坂を登りたくなります。

 未読の方は是非! 自転車のこと知らなくても全然問題ありませんから!



 テルと永田さんのその後が気になってるのは私だけじゃないはずだ!