「お嬢様フォーシーズンズ」序盤のワンシーンですが、ページ数の関係で泣く泣く削除した数ページです。
 112ページの7行目以降に本当なら組み込まれるシーンでした。

 個人的に気に入ってるシーンなので、ここで公開します。
 ネタバレが少しあるので、「お嬢様フォーシーズンズ」をまだ読んでない方はこの先をクリックしないでくださいね。

(意訳)
 本編を買ってください。


 では、「お嬢様フォーシーズンズ」本編を読んでくださった方、以下へお進みください。





















「遅いですわよ、この庶民! わたくしを待たせるとはどういう了見ですの!?」

 周囲に誰もいないことを確認してから屋上に上がると、強い風に美しい金髪をなびかせた令嬢が仁王立ちして大地を睨みつけていた。

「す、すみません、部室に寄って美空ちゃんに遅れると言ってきてたもので」
「む」

 妹の名前を出され、玲欧奈が少しだけ怯む。天下無敵の高飛車お嬢様の玲欧奈だが、血の繋がらない妹にだけは弱いのだ。

「な、なら仕方ないですわね。あの娘が部長なのですから、庶民で平部員の貴方が報告する義務を負うのは当然のことですもの」

 以前だったら「報告の時間を見越して行動なさい、このゴミムシ!」くらいのことは言われていたのだが、一週間前のあの日以来、大地に対する態度に変化が見えていた。それも、極めて大きな変化が。

「三十分ですわ」

 玲欧奈が屋上の隅に腰を下ろす。目で隣を示したので、大地もすぐ横に座る。

「今日のわたくしは、あと三十分だけ自由になる時間がありますの」

 玲欧奈ほどの令嬢となると、父親の事業に関連したパーティーなどで放課後も多忙だ。美空は本人と母親の意向もあってあまり表舞台には出ないが、その穴埋めに玲欧奈が駆り出されることは多い。今日は父親と一緒に取引先との食事会があるらしい。

「大変ですね」
「もう諦めましたわ。わたくしがこうして幸せに暮らせるのもお父様が働いてくれてるおかげですもの、できる限りのお手伝いをするのは当然ですわ」

 さも当然というようにさらりと言う。玲欧奈のこういうところに大地は惹かれ始めている。

(誤解されやすい人だけど、本当はこんなに優しいんだよね)

「な、なんですの、その顔は。言いたいことがあればおっしゃいなさいな」
「いや、玲欧奈さんのお父さんは幸せだなって思って」
「どういうことです?」
「だって、こんなに綺麗で可愛くて聡明で、しかも父親想いの優しい娘に恵まれたんですから。僕が父親だったら、絶対に結婚なんて許しませんね。……大事な娘は誰にもやらん!……とかなんとか。……あれ、玲欧奈さん?」

 見ると、玲欧奈の顔は真っ赤になっていた。

「あ、相変わらず貴方は……どうしてそう……ああっ、もう、腹が立ちますわ!」

 玲欧奈が大地の腕に抱きつく。この一週間で何度も手や舌で味わった極上の乳房が押しつけられる。制服の上からでもわかるほど柔らかい。

「わたくし、褒められることには慣れてますのに、なぜだか貴方に……大地に言われると、どうしようもないくらいに嬉しくなりますの。それがお世辞や社交辞令だとわかっていても、胸がドキドキしてしまいますわ」
「お世辞じゃないですよ? 玲欧奈さんにはお世辞なんて必要ないですから」

 ぼんっ!
 そんな擬音が聞こえてきそうなほどに、さらに玲欧奈が赤面する。

「そ、そそ、そういうところが……あ、貴方は女の敵ですわ! このまま野に放したら、多くの女性が傷つきます!」

 玲欧奈のエメラルドグリーンの瞳が大地を捉える。

「ですから、わたくしは自らの身を犠牲にして貴方を拘束します! わたくし以外の女性に、今言ったような歯の浮くセリフは絶対に禁止ですわ、いいですわね!?」
「僕は別に、お世辞を言ったつもりは」
「黙りなさい! 貴方はわたくしのモノなのですから、口答えは許しませんわ!」

 強風に暴れる金色の髪を片手で押さえつつ、もう一方の手で大地の顎を掴む。

「それと、今から弱気でどうするのですか! このわたくしを手籠めにした責任はしっかり取りなさい。お父様を説得するときはわたくしも口添えくらいはしてさしあげますから……頑張りなさい、大地」
「え? そ、それってもしかして……むぐっ」

 それ以上の質問は許さない。
 玲欧奈のキスは、そう言っているかのようだった。


(以下、エロシーンがあったのですが……削除しちゃったらしく、消えてました……あはは。ごめんなさい)