昨年の夏コミで頒布した同人誌「メイドなります!〜音々の夏休み」ですが、初版と第2刷では若干内容が変わってます。大部分はレイアウトと誤字脱字の修正ですが、ページの関係で6ページほど書き足した部分がありました。
初版を購入された方には申し訳ないので、ここで公開します。
第2刷版もどうやらほぼ売り切れたようですしね。

本編の最後に付け足したのは、以下の文です。
もーひとつのエピローグ〜「すくみず」から「おしおき」へ


 プールで泳いだ上に、夜は夜で二人の相手を務めた疲労のせいだろう、朝になっても勝と美沙はぐっすりとベッドで眠りこけたままだった。
(お二人とも、風邪を引きますわよ)
 由佳里は乱れたタオルケットを二人にかけ直すと、音を立てないよう、そっと勝の部屋を出た。もちろん、愛する主の額に軽くキスをすることも忘れない。
 まずは浴室に向かい、シャワーを浴びる。新しいエプロンドレスに着替え、朝食の準備をしてから、自室に戻る。
 由佳里に与えられた部屋は実は勝の部屋よりも広いのだが、家具や荷物が多いため、整頓されているわりには雑多でごちゃごちゃした印象がある。妙齢の女性の部屋というよりは、マニアックな趣味をした男性の部屋のようだ。
 ほとんど使うことのないベッド(毎晩勝と同衾してるためだ)の他、妙に大きなタンスが二つ、ぎっしりと怪しげな本やゲームソフト、DVDの詰まった棚が四つ(!)、そしてパソコンラック。これだけの家具があるのだから、当然、空きスペースはないに等しい。
「他にも空いてる部屋あるから、使わない荷物とか、そっちに移動していいですよ」
 勝はそう言ってくれるのだが、由佳里はこの部屋に満足しているので、今のところは特にどうこうする気はなかった。ただ、
(美沙さんと音々さん用の衣装が増えてきたので、そろそろタンスが限界ですわね)
 ワードローブだけは拡張する必要があるので、いずれは勝に頼むことになりそうだった。
 ちなみにこの美沙や音々の衣装というのは、言うまでもなく本人には内緒で用意したものだ。各種エプロンドレスは無論、水着や下着、最近はメイドとはあまり関係のなさそうな(由佳里はそうは思ってないが)コスチュームまで多数取り揃えてある。昨日音々に貸したスクール水着も、当然ここから持っていったものだ。
「さて、今朝はいっぱい書くことがありますわ」
 パソコンの電源を入れて立ち上げると、液晶ディスプレイいっぱいにツインテールの巨乳メイドさんの壁紙が現れる。
(うふふ、今日も美樹さんのメイド姿、可愛らしいですわ)
 美樹というのはここ最近の由佳里のお気に入りゲームである『窓ごしの部屋3』に出てくるヒロインで、ゲーム中のCGを取り込んで壁紙にしているのだ。
 まずはメーラーを立ち上げ、新着メールを確認する。ネット通販サイトからの情報メールにはきっちり目を通して、メイドに関する製品のチェックは怠らない。
(『メイドやります!』のパソコン版が出るんですね。うふふ、やっぱり十八禁ですか。そうでなくてはいけません)
(いけません、『六畳一間メイド付き!』を買い逃していましたわ。あとで本屋さんに行きましょう)
(秋葉原にまた新しいメイド喫茶ですか。……うぅん、メイド服は可愛らしいですが、中身はどうなんでしょうか。外面だけでなく、内面もきちんとメイドになっていただきたいです)
 真剣なまなざしで新着情報のチェックを終えてから、
(では、紗耶子さんからのメールを読みましょう)
 親友からのメールをクリックする。
<おはよう、由佳里。昨日のメールも面白かったわ。相変わらず隠し撮りとは思えない素晴らしいメイド写真、ありがとう。>
 幼い頃、一緒にメイドになろうと誓い合った親友は、音々の愛らしいメイド姿の写真がいたく気に入ったようだ。メイドに関する美的感性は由佳里と紗耶子は極めて近い。
(音々さんのあの可愛らしい姿とご主人様に対する深いご奉仕の心は、まさにメイドの鏡ですからね)
 自分の弟子を褒められたような気がして、由佳里も嬉しい。
<でも、あんな小さくて細い音々ちゃんにもご主人様はいっぱいお仕置きをしてるのね。後学のためにも、そこらへん、詳しくメールしてくれると嬉しいです。>
 紗耶子にはどうもM属性があるらしく、由佳里のレポートのうち、特に「お仕置き」に関連する箇所には過剰に食いついてくる。
 紗耶子の反応が面白いから、つい由佳里も色々脚色して普段の生活をメールに書いてしまうのだ。もちろん、エッチなことをメインに書いている。
 そのまま紗耶子からのメールを読み進めると、いつものように簡単な日常報告が記してあった。職場の改装工事があるため、ここ数日は引っ越し作業などで大変だったらしい。
(紗耶子さんも大変ですね……あら)
 メールの末尾にある追伸を読んで、由佳里の表情に笑みが浮かぶ。
<追伸:
 由佳里が買い損ねた『おしおき〜可愛いメイドの飼い方』の初回限定版、なんとか入手できたので、近いうちに送ります。>
 ずっと狙っていたパソコンゲーム(当然十八禁である)なのだが、予約が遅れて通常版しか入手できなかったソフトだ。紗耶子はショップごとに異なる予約特典のために複数買うことが多いので、余っていたら譲ってくれるよう頼んでおいたのだ。
 嬉しくて、自然とキーボードを叩くリズムも軽やかになる。
「お礼を兼ねて、いつも以上に詳細に、昨晩のことをメールしましょうね」
 由佳里は毎朝の日課となった親友へのメールを書き始める。勝のメイドになってからずっと続けていることだった。
<おはようございます、由佳里です。
 まずは『おしおき』の件、ありがとうございました。届くのを楽しみにしています。
 さて昨日のことですが、音々さんが帰宅されるというので、その前に私とご主人様、そして美沙さんの四人でプールに行ってきました。添付した画像は、そのときにこっそり撮影した音々さんのワンピース水着メイド姿です。可愛いでしょ?
 プールでも、もちろん私はご主人様にご奉仕しました。プールに入ったまま、ご主人様の逞しいモノを両手でしごきました。ご主人様もその気になってくれて、水の中でバックから激しく貫かれてしまいました。
「公衆の場で主のモノを触るような淫乱メイドにはお仕置きだ」
 ご主人様はそうおっしゃりながら、激しく私を責めます。私は泣きながら、計三回もイカされてしまいました。>
 無論、こんな事実はない。ないが、由佳里は楽しそうに次々とキーを叩く。
<帰宅してからは美沙さんと一緒に目隠しされて、お尻が腫れるまでスパンキングされました>
<実は今も、ローターを挿れられたままです。今日は一日、このまま過ごすようにとご主人様に命令されています>
 などなど、次々にあることないことを書き連ねる。
「あら、もうこんな時間。ご主人様、起きてしまいますわ」
 時計を見た由佳里は慌ててメールを紗耶子に送信する。
(紗耶子さんも音々さんのようにメイドにしてあげたいですわ、いつの日か)
 その日が案外近かったことを由佳里が知るのは、これから数日後のことだった。